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満月サボテンが咲く夜に [チャムとホワイティーの日記]

 今回のお話は、茶猫とシャオちゃんが電話で話をしながらできました。
 
 サイトのマスター様には、一読いただいておりますので、あらかじめご了承ください。
 
 ここは、森の中にある広場。
 今日は、週に一度、市が立つ日。

 沢山の露店が建ち並ぶ中、他の店とは一線を引いた感じの商品を多数並べた店がある。
 この辺りでは見ないような、怪しい置物や色とりどりの果物や野菜、調味料なのかはたまた、染料などの薬品なのか、小瓶にはいった粉や液体もある。

「シャオちゃん、今日和」

 チャムは、その店の店主に声をかける。赤い髪を三つ編みにして、キャスケットのような帽子をかぶった少女ーシャオロンーが顔を上げる。

「あいやー、チャム姐さん、いらっしゃいアル!」 
「えっと、あれとこれとそれと………を、全部いただける?」
「いつもありがとアル~。…あ、チャム姐さん、良いものがあるアルよ」
「…良いもの?」

 首をかしげるチャムにお構いなく、荷物をあさって出したものは、小さな小瓶。手のひらにすっぽりと収まるくらいの大きさだ。
 中には、何か液体のようなものが入っている。

「これアルよ。ほら、この前、地下室への階段の電気が壊れて歩きづらいっていってたアルね。 それに、月を見たこともないって。
 で、良いものが手に入ったから、持ってきたアルよ」
「あぁ…、覚えていてくれたの。で、これって?」
「これ、『満月サボテン』の花のエキス、アル」
「『満月ポトフ』?美味しいのかしら?」
「満月サボテン、アル。これは染料だから、美味しくないアルよ」

 チャムの聞き違いにあきれた顔で応えると、一枚のヴェールを差し出した。

「その染料で染めたものアル。暗闇の中でお月様くらいの明るさで輝き続ける、不思議な染料アルよ。ほんのりと良い香りもするアル。
 でも、なかなか取れないから貴重品アル」
「あら、そんなに貴重なものなの?」

 チャムが驚いていうと、シャオはゆっくりと頷きながら、説明を始めた。

「そうアル。この花は、満月の夜に月が一番高いところに昇ってから、一時間しか咲かないアル。
 その上、この小瓶くらいのエキスをとろうと思ったら、花が約30㎏必要になるアル。
 あ、わかりやすくいうとチャム姐さんのところの寸胴鍋で、だいたい5~6杯分くらいアルよ。
 だから、砂漠の村では、花が咲くときになると村中総出で花を摘んで、それを集めて、ゆっくりと一週間かけて圧搾して、とるアルよ」
「大変なのね…」
「そうアル…。でも、それ1本で染まる布の量は約3反分。輝きは、ほぼ永遠に続くアル。
 そのサボテンがある砂漠の村では、花嫁さんが自分でヴェールを作って、嫁ぐアル。永遠に変わらない、自分の心をそのヴェールに託しているアル」
「そうなの…。なんだか、ロマンチックね」
「そうアルよ~。婚礼は夜に行われるから、花嫁さんのヴェールがほんのり光って、とっても綺麗アル…。
 あ、このヴェールは、花嫁さんが練習用に作ったものアルよ。それを特別にもらったアル。それもあげるアル」
「それもって、これも?どっちも相当高いものでしょう?ただで頂くわけいかないわ」

 チャムが、慌てて財布を出すと、シャオは彼女の裏にある台車を見ていった。
 大きな台車に乗っている1/3の荷物は、シャオのところから買ったものだ…。

「……こんだけ、一杯買ってくれたのだから、これくらいはサービスアルよ。役に立ててもらえたら、嬉しいアル」
「…そう?じゃぁ、お言葉に甘えて頂いていくわ。ありがとう、シャオちゃん」

 申し訳なさそうに微笑んで、シャオに何度もお礼を言うと、ヴェールと小瓶を大事そうにしまい、チャムは広場をあとにした…。


 家に着いてから、ヴェールを眺めていたチャム。
 日も暮れかかり、そろそろ、眠くなり始めた。
 ふと、あることに気が付き、それに手紙を添えて風呂敷に包み、ホワイティーの首に巻いた。

「ホワイティー、それ、あとでエリカさんのところに届けてね。彼女、そういうのに興味ありそうだから、あたしよりも役に立てられると思うの」
「ニャー」

 めんどくさそうに返事をしたホワイティー。
 チャムは、そのまま寝室に入り、眠りについた…。
 ただ、彼女はまだ、気が付いていない。エリカさんには、ヴェールよりも、小瓶にはいっている染料の方が、興味があるのだということに…(自爆)
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